夏休みのはじまる頃、カブトガニのオスとメスは大潮の満潮の夜に沖から浜辺に泳いできます。そして、砂浜に穴を掘って2mmくらいの小さな卵をたくさん産みます。
夏の暑い太陽をあびて、砂の中の卵は温められます。いろいろな生きものの卵は、殻が破れて赤ちゃんが出てきますが、カブトガニはちょっとちがいます。卵のまわりの黄色いかたい殻が破れると、中から透明な膜に覆われた卵が出てきます。そして、この卵は海水を吸ってちょっとずつ大きくなり、5mmくらいになります。中ではカブトガニの赤ちゃんがクルクル回っているのが見えるため、この卵のことを「回転卵」と呼びます。この頃の卵を砂の中から持ち帰って顕微鏡で観察すると、卵の中で赤ちゃんが脚を動かしているのや、脱皮をしているのがわかります。
夏休みが終わる頃の大潮の満潮の夜、砂の中で卵の殻を破って赤ちゃんが生まれます。小指の爪くらいの小さな赤ちゃんたちは、砂からはい出て、海の潮の流れに乗って移動し、干潟の泥の中にもぐりこみます。この後、カブトガニの赤ちゃんは干潟の泥の中でエサを食べて、何回もの脱皮を繰り返して数年後には手の平くらいの大きさに成長します。「生きている化石」と呼ばれるカブトガニは3億年前から今の時代まで海で生き延びてきた生きものです。その生態はとても不思議ですね。
NPO法人 水辺に遊ぶ会 足利由紀子
イベント名 | カブトガニのお話し |