干潟の多様な生き物について学んだ塾生たち。しかし、海の環境の変化から、姿を消してしまった生き物がいることも知りました。続いては中津干潟と漁業について、大分県漁協中津支店の柳田さんと林さんがお話をしてくれました。
中津干潟から姿を消した生き物は、アサリです。20年以上前の中津では、たくさんのアサリがとれていましたが、いまではほとんどとれません。とりすぎであれば数年すれば戻りますが、戻らないのです。海の温度が上昇したこと(2017〜2019年で海水温が3度上がったといわれています)や、アサリが住みやすい砂が流れ出してしまったことが原因と考えられています。アサリがとれなくなったことには、漁業者も頭を悩ませました。そこでオーストラリアで行われている牡蠣の養殖に挑戦することになりました。オーストラリアの人に教わりながら、平成24〜25年の2年間を研究に費やし、平成26年から本格出荷を始めたそうです。
陸から1kmほどのところにある養殖場に到着すると、生産者の方が胴長(胸まであるズボンタイプの長靴)で海に入ったのです! え!深いのでは! ところが、潮が引いている時間帯は、水深が50〜60cmほどなのです。驚きました。陸から1kmもあるのに! 中津干潟って本当に広いんですね!
牡蠣の養殖といえば、海中に縦長にぶら下がる牡蠣縄のイメージですが、ここでは三角錐の養殖バッグを使い、その中に牡蠣の赤ちゃんを入れて育てています。バッグには全面に穴があり、穴の大きさは大小あって、牡蠣が成長すると穴の大きいバッグに移していきます。干潟での養殖は、日に2度、干潮のときにバッグが海面より上になり、牡蠣が乾燥するのが特徴です。これにより牡蠣は、栄養分を体の中に蓄えようとし、より美味しくなるのだそうです。また、バッグの中で常に波に揺られ互いにぶつかることで、フジツボなどの汚れもつきません。美味しく成長した中津干潟の牡蠣は、黒光りして美しく、「ひがた美人」と名付けられ、人気が出てきました。生食でも安心な牡蠣です。それは、貝毒が発生しないように常にプランクトンのチェックをしているためです。
バッグの中から成長過程の牡蠣を出して、見せてくれました。ことしは出来が良いそうで、秋の終わりにはひがた美人の生食が楽しめそうだということです。ひがた美人は黒っぽい姿が特徴ですが、黒くなる理由はまだわかっていません。海の謎はまだまだたくさんありますね!
イベント名 | おおいた海の伝道師育成塾 |
参加人数 | 小学5・6年生18名 |
日程 | 8月7・8日 |
場所 | 大分県中津市 |
主催 | 海と日本プロジェクトin大分県 事務局 |